僕の大好きな人は
時におこりんぼで
時に意地悪で。
いつもなんだかんだで、優しい人。
《イジワルな彼》
また、困らせてやろうと思ったんだ。
意地悪した後の反応が逐一可愛くて、たまに見たくなるから
「…ちょっと遅れてしまいましたね…」
今日はイサトとの逢瀬なのに、用事がはいってしまい多少の遅刻を余儀無くされた僕は人並みをかきわけながら、待ち合わせの場所…少し緩やかな丘上の、幹の太い、大きな一本の木へ。
しかし、行ってみるとイサトの姿はなくて…
「……?」
周りをキョロキョロ見渡しても彼の姿が見えない…まだ来ていないのかと木の幹にもたれかかり、彼を待つ……
こと数時間…。日が落ち始めて、風が冷たくなって。
日暮れとともにイサトが居ない不安が押し寄せて木のふもとに座って、膝を抱えて。
「イサト…」
小さく呟いて泣きそう自分をこらえていると…
クスクス、と笑い声がして。
「お前、気付くの遅すぎ」
僕が背を預けていた反対側からイサトが現れて…その様子から、彼はずっと前から僕の様子を反対側から眺めていたのだとわかって。
また謀られた…
不安が、安心と、ちょっとの怒りに変わって…
ボロボロと涙が溢れて止まらなくなってしまった…
「なんっ…イサトはいつもっ…」
…こんな意地悪ばかりするんですか
「はじめか、ら…居たなら居たで…」
抱きしめてくれればいいのに…
「彰紋、ごめんな…」
そういうイサトの顔は笑っていて
「あゃまる気…なぃっ…でしょうっ…!」
更にそれにムキになってしまう自分がいて。
「彰紋、悪かったって…」
広い胸に閉じ込められて…優しい声色で囁かれると許せてしまう自分がいて。
「もうしないでくださいね?」
「わかったって。」
馬鹿だな彰紋
お前の反応がいちいち可愛いから
ついつい意地悪したくなるんだよ…
流石に会う時間がもったいないから…
この悪戯は、二度としないけれど……。
愛おしくて狂いそうだった。
信じながら待っててくれる
最愛のヒトが……
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